とにかくきらいだ

あの薄っぺらくてギラギラした、例の虫が嫌いだ。
それは理屈ではないと思う。感性からくる嫌悪。
こうやって度々そのことについて書いてしまうのは
そんなことで感情が波立つのが腹立たしいからなのか、
とにかくなんか叫ばないと気が済まないからだろうか。
私はその他の虫には寛容な方だ。ガだろうが、クモ(厳密には虫にあらず)だろうが、
いもむしだろうが、出て来たら、しみじみと観察する余裕さえある。
毒さえなければつまみあげることすらする。でも、ヤツだけは別。
ぶわっと。総毛立つ。瞬時にいかに仕留めるか考えをめぐらし、
硬直しながらも、なにかしらの凶器を手に取る。
ヤツにしてみれば相当な理不尽にちがいない。
なぜならたった一匹、不幸にも私のテリトリー(住処)に紛れ込んだ、
という、その程度の咎によって、ほぼ、確実に
(私はテリトリー内において、ヤツらを「見逃す」ということは99%ない。
と、いっていいとおもう)命を失う訳だ。
そのことについては、自分でもちょっと病的だと思う。
あらゆる隙間を充填し、就寝前には台所の流しを慎重に掃除し、
いまだ目撃もしていないヤツが水を飲んだりできないように、
一滴の水滴も見逃さぬように拭き取る。もはや神経症か。
昨日お外で飲酒し、シンクの掃除をせぬまま眠ってしまった。
おまけに昼迄寝ていた。なんて怠惰なんだ自分、と多少うんざりしてシンクを見ると、
二匹の小さい飛びクモがゴミ受けの周りをうろうろしている。
生ゴミを流しにおきっぱなしにすると、小さいハエが寄ります。
それを狙って来たのだと思う。反省。
とりあえず、これから水を流すので退去するようにクモらに忠告してから、
昨夜さぼったシンクの掃除を開始する。ふと気がつくと、
二匹のうちの一匹とおぼしきクモがシンクに倒れている。
拾い上げても動く様子はなし。
だからいったのにおろかモノよ。と、
望まぬ殺生にぐったりしたのが昼。
シンクのたらいにはコップとびわこふきん(洗剤のいらない木綿の食器洗い用布)
が漬かりっぱなし。予定もなく(ただしするべきことはある)
何もやる気のおきない一日である。生産性ゼロ。
その日の夜半すぎ、このアパートで暮らしはじめてからはじめて、
見事なべっ甲色のあの昆虫を発見。4cm強、どこから!?
瞬間、台所洗剤をふりかける。3回かすり、弱り気味になったところを
台所洗剤を入れたスプレーですかさず攻撃。
格闘10分程度。ようやく仕留める。
サボったとたんのタイミングでコレだ。台所は清潔に。
本当は、世のすべてのものは必要で、無駄がないにつき、
迷惑だからといって、生きているものを簡単に排除すべきではない、
と思っている。常は。
それなのにヤツを前にして、つかまえて外に逃がす、
というような寛容な態度に出られない自分にもうんざりしている。
だからといって生け捕りはできないので、怖すぎて。
攻撃の後ろには恐怖がある。と、いうことで。
その恐怖の根源には何があるのか。将来この星をヤツが占拠する日が来るかもしれない、
ということを、どこかで察知しているからか、とか。空恐ろしいことを考えてみる。

みみよりG豆知識
クッ○ローチなんて無粋で高価な備品は不要ですよ。オクサマ。ヤツは界面活性剤にめっぽう弱い。台所洗剤は油汚れにめっぽう強い。スプレー容器に薄めて入れておいて、吹きかけてみればよろし。あっけなくお亡くなりになります。お掃除もらくらく。