ボコノン

カート・ヴォネガットっていうアメリカの小説家がいます。
SFっていうジャンルに入れられてるけど
そこだとなんか違和感。
もうボネガットっていうひとつのジャンルといってもいいと思う。
バカバカしいエピソードに脱力しながら
フラフラしていると、辛辣な皮肉とか
うっかり踏んで不意打ち。受け身取る暇なし。
とかそんな感じです。
ナンセンス。
毒がないと生きて行けない汚染体質には
ぴったりというか中毒性のある読み物です。


たとえば「猫のゆりかご」
っていう本があって
そこにボコノン教っていう
架空の宗教が出てくるんだけど
これが、はなからインチキを自称してる。
作中出てくる教義も儀式も
ヘンテコなものばかり。
そもそも「無害な非現実」を生きるよすがにしなさい
というのが信条なんですからね。
科学なんてくそくらえってとこでしょうか。
そもそも宗教なんて全部誰かのでっちあげ
とかいうと各方面から怒られるかもしれないけど
実はみんなうっすらと思う所なんじゃないの。
ただそれでも何かを信じたいのはなんでだろう。
何かに手を合わせたり
見えもしないものをありがたがっちゃうのはなんでだろ。


ところでこの小説に猫は関係ない。
猫のゆりかご
っていうのは、あやとりの形についてる名前で
あの梯子みたいなよく見る形である。
それは実際ゆりかごじゃないし
そこに猫もいない。
気がついた?
猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)
表紙のイラストを和田誠さんが描いてるのってのもうれしい。